先に立場を明かします

株式会社TOEは福岡のWeb制作・AI開発の会社で、AI検索対策のサービスを売りうる利害関係者です。この工程表は当社がお客様に提案している順序そのものですが、「この通りにやれば引用されます」とは書きません。 それを証明した人は、当社を含めて誰もいないからです。


結論(先に表で)

期間 やること 判断できるようになること
1〜30日 現状を測る/名乗りを固定する 自社がA〜Dのどの状態か
31〜60日 自社サイトの記述を具体化する 発注条件が文章として書けているか
61〜90日 外部に書かれる材料を作る 第三者情報がゼロかどうか

順番が逆になると、作業が無駄になります。 特に、記事を増やす作業を最初に持ってくると、多くの会社で効果が出ません。理由は下に書きます。


なぜ順番が重要なのか

AI検索で自社が出ない原因は4種類あり、対処法が別物です。

状態 何が起きているか
A. 認識されていない AIが会社を特定できない
B. 混ざっている 同名・類似名の別会社に説明を持っていかれている
C. 薄い 説明はされるが会社概要レベルで止まる
D. 候補に挙がらない 発注クエリで他社が選ばれる

Bの会社が記事を増やしても、状況は変わりません。 AIが「どれが御社か」を判別できていない状態で材料を足しても、判別できないままだからです。当社が自社を測ったとき、AIが根拠にしていたのは同名の別サービスばかりで、自社サイトは参照元に1つも入っていませんでした(AI検索対策を売る会社が自社を測ったら10点だった)。

一方、当社が福岡県の金属加工業45社を測ったときは、45社中42社(93%)でAIが公式サイトを根拠に説明できていました福岡県の金属加工業45社をAIに聞いたら、42社は説明できた)。つまりA・Bの会社ばかりではありません。測らないと、自社がどこにいるか分かりません。


1〜30日:測る、名乗りを固定する

週1〜2:測定(実作業 約1時間)

手順は自社がAIにどう説明されているかを、30分で調べる手順に分けて書きました。要点だけ再掲します。

  • 社名で3回聞く/発注クエリで3〜5本聞く
  • 参照元のサイトを必ず開く
  • 回答の全文と参照元を記録として残す

この段階での成果物は「対策案」ではなく、測定記録です。ここを残さないと、90日後に何が変わったのか言えなくなります。

週2〜3:名乗りの固定

Bの状態だった場合、ここが最優先です。やることは3つです。

やること 具体的に
会社概要を文章で書く 所在地・設立年・事業内容・対応分野を、画像やPDFではなく本文として書く
同名の存在を明記する 「当社は福岡県の〇〇工業であり、〇〇市の同名の会社とは関係ありません」
表記を統一する 正式社名・略称・英語表記が、サイト内でばらばらになっていないか

3つ目は見落とされがちですが、影響があります。サイト内で「株式会社〇〇」「〇〇(株)」「〇〇工業」が混在していると、AIから見て同一の対象だと確定しにくくなります。

週4:AIが読める状態か確認する

  • <自社ドメイン>/robots.txt を開き、AIクローラを拒否していないか確認する
  • 会社概要・事業内容が画像やPDFの中の文字になっていないか確認する
  • ログイン後にしか見えないページに、事業内容の説明が入っていないか確認する

主要25サイトの robots.txt を実際に数えたところ、AIクローラを1つ以上拒否していたのは6サイト、うち3つが新聞社でした(主要25サイトのrobots.txtで、AIクローラは拒否されているか許可されているか)。判断の基準はAIクローラを許可するか拒否するかに整理しています。


31〜60日:自社サイトの記述を具体化する

ここからが本体です。学術研究が効果を確認しているのは、マークアップではなく「書いてある内容」です。

プリンストン大学ほかのGEO論文(KDD 2024)は、10,000クエリ・9手法を比較し、出典の明示・統計や数値の追加・記述の具体化によって可視性が30〜40%向上したと報告しています。

当社がPerplexityで測ったときも、引用されていたのは次のような箇所でした。

  • 「0.03mm〜1.0mmの極薄板溶接に対応」
  • 「多品種小ロットで対応」「1点から製作」
  • 「マシニング加工、NC旋盤加工、5軸加工に対応」

逆に、「高品質」「短納期」「お客様第一」といった抽象的なキャッチコピーの箇所は引用されていませんでした。

何を書くか

書くもの 悪い例 良い例
対応範囲 各種金属加工に対応 ステンレス・アルミ・鉄の切削、板厚0.5〜12mm
ロット 小ロット歓迎 1個から300個まで。試作単品も受注
納期 短納期対応 標準10営業日。最短3営業日の実績あり
設備 最新設備を導入 マシニングセンタ3台、5軸1台、NC旋盤4台
実績 多数の実績 半導体製造装置部品、食品機械部品(社名は非公開)

書き方の詳細は発注クエリで引用される製品・サービスページの書き方、会社概要ページについてはAIが読む会社概要ページの書き方に分けました。

何をやらなくていいか

構造化データ(FAQPageなど)の実装を、この段階の主作業にしないでください。

調査 方法 結果
Ahrefs JSON-LDを追加した1,885ページ vs 対照群4,000ページ AI Overviews −4.6%(有意)。「有意な引用増をもたらさない」
SE Ranking 129,000ドメイン・216,524ページ FAQスキーマあり3.6件 vs なし4.2件
SearchVIU 5つのAIが実際にJSON-LDを読むか検証 隠しSchemaを抽出できたのは0/5

当社の社内設計書にも、最初は「FAQPage実装で引用率2〜3倍」と書いてありました。出典をたどったら業者ブログでした。撤回しています。 詳しくは構造化データ(schema.org)は、AI検索に効くのかに書いています。


61〜90日:外部に書かれる材料を作る

ここが、いちばん差が開いていた項目です。

福岡県の金属加工業45社の実測で、AIが確認できた事実を項目別に数えた結果がこれです。

AIが確認できた事実 社数 割合
事業内容が具体的に分かる 45社 100%
主力製品・サービス名が分かる 44社 98%
所在地が分かる 44社 98%
従業員数・売上規模が分かる 43社 96%
設立年が分かる 42社 93%
取引先・納入実績が分かる 34社 76%
報道・業界メディアで取り上げられている 14社 31%

上6項目は、会社概要に書けば済みます。落ちていたのは最後の1つだけでした。

Ahrefsが75,000ブランドを分析した相関分析でも、AI検索での可視性と最も強く相関していたのは外部でのブランド言及(相関係数0.664)で、以下ブランド検索ボリューム0.392、ドメイン評価0.326、被リンク0.218と続きます。ただし相関は因果ではありません。「言及されているから引用される」のか「良い会社だから両方起きる」のかは、この分析では区別できません。

中小企業が現実的に打てる手

やること 難易度 備考
展示会出展・受賞・新設備導入をプレスリリースにする 業界紙が拾う可能性がある
業界メディアの取材依頼に応じる 来たものを断らない、というだけ
技術解説・加工事例を自社で出し続ける 引用される材料になる
地域の産業支援機関・組合の名簿に載る AIが読む一次情報になりうる
取引先の導入事例に社名を出してもらう 先方の許諾が要る

具体的な進め方は自社サイトの外側でやることに書きました。


90日でやらないこと

期間内にやらないと決めたほうがよいものも挙げます。

  • 記事の大量生産。 短期間に大量のページを作ると、検索側から「順位のための量産」と見なされる可能性があります。当社は既存ページを厚くする方を優先しています
  • AI検索の順位表の作成。 同一質問での再現率は100回に1回未満という調査があり(SparkToro / Gumshoe.ai)、順位として扱える精度がありません
  • 「AI検索対策で受注が増える」という前提での投資判断。 外部調査(Piftee・2026年5〜6月・n=196)では、発注先探しで生成AIを使った経験は75.0%ある一方、AI経由で実際に発注に至ったのは21.1%です

誰がやるのか(社内の分担)

外注しない前提で書きます。90日のうち、外部の力が要るのは実質ゼロです。

作業 担当 実作業の目安
測定(30分×3回) 誰でも可 月1.5時間
会社概要の書き直し 総務・経営者 3〜5時間
事業内容・対応条件の記述 現場の責任者 5〜10時間
加工事例・実績の整理 現場+広報 案件1件あたり15分
プレスリリース 経営者・総務 1本あたり2時間
robots.txt の確認 制作会社に確認 10分

いちばん詰まるのは「事業内容・対応条件の記述」です。 書く内容は現場の人しか知らないのに、書く作業は広報や総務に割り当てられることが多いからです。

現実的な回し方は、現場に書かせず、現場に聞き取ることです。次の6問を聞いて、答えをそのまま文章にすれば、記述の骨格はできます。

  1. うちが受けられる材質と板厚(サイズ)の範囲は
  2. 最小ロットと最大ロットは
  3. 標準納期と、最短の実績は
  4. 社内でできる工程と、外注に出す工程は
  5. 受けない仕事はどんなものか
  6. 直近1年で、いちばん多かった案件の種類は

6問目の答えが、そのまま「主力」の記述になります。


90日を過ぎたあと

3か月で終わる作業ではありません。ただし、91日目以降にやることは激減します。

頻度 やること
月1回 測定(30分)。記録を残す
案件ごと 加工事例・実績を1件追加する
出来事があるたび プレスリリースを出す
半年に1回 会社概要の数字(従業員数・設備・認証)を更新する
年1回 robots.txt と llms.txt の内容を見直す

この頻度なら続きます。 逆に「週2本の記事更新」のような計画は、中小企業では続かないことが多く、途中で止まったサイトは更新日が古いまま残ります。


この記事で言えないこと(限界)

  • この90日で引用が増えることを、当社は測定していません。 施策の前後比較は自社でも未実施です
  • 引用した外部調査は当社の実測ではありません。GEO論文の30〜40%は、当社が再現した数字ではありません
  • 相関分析(Ahrefs)は因果を示すものではありません
  • 業種によって順序は変わります。ここに書いたのは、製造業のお客様が多い当社から見た順序です

まとめ

  • AI検索対策は測る→名乗りを固定→記述を具体化→外部に書かれるの順で進める
  • 順番を間違えると効かない。 特にB(同名と混ざっている)状態で記事を増やしても変わらない
  • 1〜30日は測定と名乗り。成果物は対策案ではなく測定記録
  • 31〜60日は記述の具体化。効果が確認されているのはマークアップではなく書いてある内容(GEO論文・KDD 2024)
  • 61〜90日は外部での言及。45社実測で唯一大きく落ちた項目が報道・業界メディアでの言及(31%)
  • 構造化データの実装を主作業にしない。 独立実験では引用増は確認されていない

90日の最初の30分は、測定です。自社がAIにどう説明されているかを、30分で調べる手順から始めてください。


本記事で引用した当社の実測:2026年7月18日Perplexity 3クエリ、2026年8月1日 自社測定(10/100)、2026年8月1日 福岡県金属加工業45社。外部調査:プリンストン大学ほか「GEO: Generative Engine Optimization」(KDD 2024)、Ahrefs、SE Ranking、SearchVIU、SparkToro / Gumshoe.ai、Piftee(2026年5〜6月・n=196)。