先に立場を明かします
株式会社TOEは福岡のWeb制作・AI開発の会社で、この記事に書かれた基準で審査される側です。自社に不利な項目も入れています。当社が過去に誤った資料を作った件も書きます。
結論(先に表で)
| 質問 | 望ましい答え |
|---|---|
| 効果を保証しますか | 「保証できません」 |
| 何を成果指標にしますか | 「0か1かの粗い判定」「Search Console」「問い合わせ」 |
| 引用回数の増減を報告しますか | 「試行回数と測定日をつけて出しますが、順位としては扱いません」 |
| 構造化データで引用は増えますか | 「独立実験では増加は確認されていません」 |
| 作業の中身は | 記述の具体化・名乗りの固定・外部での言及 |
「AI検索で上位表示を保証します」と言う相手は、その時点で外してよいと考えています。 AI検索に順位という概念が成立しないからです。
前提:この領域は「2006年のSEO業界」に似ている
SEOコンサルタントの辻正浩氏は2026年4月のWeb担当者Forumで、AI検索対策の現状を「2006〜2009年のSEO業界に酷似している」と批判し、多くのWebサイトには現段階では不要だと述べています。
当社が測った限り、この指摘は妥当です。理由は効果測定の手法が確立していないからです。同じ質問を繰り返しても同じブランドが再現される確率は100回に1回未満という調査があり(SparkToro / Gumshoe.ai)、当社の実測でも引用ドメインは1件も重複しませんでした(AEOの効果はどう測るか)。
効果が測れない領域では、売り手の主張を検証できません。 だからチェックリストが要ります。
チェックリスト12項目
主張の検証(1〜4)
1. 提示された数字の出典をたどれるか
「引用44%増」「3.1倍」といった数字が出てきたら、出典を聞いてください。 当社が調べた範囲では、この種の肯定的な数字はすべてAI検索対策を売っている業者の自社ブログで、方法論が開示されていませんでした。
当社の社内設計書にも「FAQPage実装で引用率2〜3倍」と書いてありました。出典をたどったら業者ブログでした。撤回しています。
2. 構造化データについて何と言うか
| 調査 | 方法 | 結果 |
|---|---|---|
| Ahrefs | JSON-LD追加1,885ページ vs 対照群4,000ページ、4手法で検証 | AI Overviews −4.6%(有意)/AI Mode +2.4%/ChatGPT +2.2%(誤差範囲) |
| SE Ranking | 129,000ドメイン・216,524ページ | FAQあり3.6件 vs なし4.2件 |
| SearchVIU | 5つのAIがJSON-LDを読むか検証 | 抽出できたのは0/5 |
「構造化データを入れれば引用されます」が主要な提案内容なら、根拠を確認してください(構造化データ(schema.org)は、AI検索に効くのか)。
3. 効果を保証すると言うか
保証すると言われたら、その保証の条件を書面で確認してください。 何をもって達成とするのか、測定方法は何か、再現性はどう担保するのか。この3つに答えられない保証は、成立しません。
4. 「AI検索での順位」という言葉を使うか
AI検索の回答は一覧ではなく文章です。順位という概念がありません。 この言葉を使う相手は、測定方法を理解していない可能性があります。
作業内容(5〜8)
5. 作業の中身が「記述の具体化」を含んでいるか
効果が学術的に確認されているのはここです。プリンストン大学ほかのGEO論文(KDD 2024)は、10,000クエリ・9手法を比較し、出典の明示・統計や数値の追加・記述の具体化によって可視性が30〜40%向上したと報告しています。
当社の実測でも、引用されていたのは「0.03mm〜1.0mmの極薄板溶接に対応」のような具体的な記述で、「高品質」「短納期」といったキャッチコピーの箇所ではありませんでした(発注クエリで引用される製品・サービスページの書き方)。
6. 現状測定から始めるか
いきなり施策の提案が出てくる場合、その会社は御社の現状を知らないまま提案しています。 AI検索で出ない理由は4種類(認識されていない/同名と混ざっている/説明が薄い/候補に挙がらない)あり、対処法が別物です。
7. 記事の量産が主な提案内容になっていないか
短期間に大量のページを作ると、検索側から「順位のための量産」と見なされる可能性があります。「月20本納品」型の提案は、目的と手段が入れ替わっていないか確認してください。
8. 外部での言及について何か言うか
当社の45社実測で唯一大きく落ちた項目は報道・業界メディアでの言及(31%)でした。Ahrefsの相関分析でも、AI可視性と最も相関が高かったのは外部でのブランド言及(0.664)です(ただし相関は因果ではありません)。ここに触れない提案は、自社サイト内で完結する範囲しか見ていません。
契約・運用(9〜12)
9. 成果指標が事前に定義されているか
契約前に、何をもって成果とするかを文書にしてください。 「AI検索での可視性向上」では判定できません。
10. 測定条件が報告書に書かれるか
試行回数・測定日・使用エンジン・質問文。この4つが書かれていない報告は、翌月の数字と比較できません。
11. 生データを受け取れるか
集計後の数字だけ渡される契約だと、解釈を検証できません。AIの回答全文と参照元URLを受け取れるかを確認してください。
12. 解約後にデータと成果物が残るか
サイトの改修分は残りますが、測定記録・生成した文章の権利・ツールのアカウントは契約次第です。
ツールを買う場合の追加確認
AI可視性の測定ツールが複数販売されています。当社も自社サイトで1つ提供しています。 そのうえで書きます。
| 確認点 | なぜ |
|---|---|
| 何回試行しているか | 1回の結果を提示するツールは、揺れをそのまま出しています |
| どのエンジンを見ているか | ChatGPT・Perplexity・Gemini・AI Overviewsで結果は異なります |
| スコアの算出根拠が公開されているか | 「AI可視性スコア78点」の内訳が不明なら、改善の方向が分かりません |
| 生データを出せるか | 回答全文と参照元を見られないと、何を直すか判断できません |
スコアそのものより、「AIが根拠にしたサイト一覧」の方が実用的です。 そこに自社が入っていないなら、順位の話ではなく、読まれていないという話だからです。
発注しないという選択肢
多くの中小企業にとって、いま外部に発注する必然性は高くありません。 理由は3つです。
- やることの大半が自社でできます。 会社概要を具体的に書く、納入実績を書く、robots.txt を確認する。いずれも外注しなくても着手できます
- 効果を保証できる人がいません。 測定手法が確立していない領域です
- AI経由の発注はまだ限定的です。 外部調査(Piftee・2026年5〜6月・n=196)で、AI経由で実際に発注に至ったのは21.1%でした
発注が有効なのは、社内に書く人と時間がない場合です。 その場合でも、上の12項目で相手を選んでください。
見積書の読み方
AI検索対策の見積は、内訳が「AEO対策一式」になっていることがあります。 分解して確認してください。
| 項目 | 何の作業か | 自社でできるか |
|---|---|---|
| 現状測定・レポート | AIに質問して記録する | できる(30分) |
| 会社概要・事業内容の改稿 | 文章を書く | 材料は社内にしかない |
| 事例ページの追加 | 仕様つきの事例を作る | 撮影と数値は社内 |
| 構造化データ実装 | JSON-LDの追加 | 制作会社の作業 |
| llms.txt 設置 | ファイルを置く | できる(1時間) |
| 月次レポート | 測定と報告 | できる(月1.5時間) |
「自社でできる」に印が付く項目が多いほど、外注の必要性は下がります。 そのうえで社内に書く時間がないなら、外注は合理的な判断です。
金額の目安を書ける立場にないので書きませんが、判断基準は1つです。 見積の中身が「文章を書く作業」に割かれているなら妥当性はあります。「技術的な実装」に大半が割かれているなら、その実装が何の根拠に基づくのかを聞いてください。
契約書に入れておく条項
トラブルの多くは、次の3点を決めていないことから起きます。
- 成果指標と、その測定方法(「AI検索での可視性向上」では判定できません)
- 納品物の定義(改修したページの一覧、測定記録の生データ、作成した文章の権利)
- 解約時の扱い(ツールのアカウント、測定記録の引き渡し)
特に2の「測定記録の生データ」を明記してください。 集計後の数字だけ渡される契約だと、契約終了後に何も残りません。
自社でやる場合の工数目安
外注しない場合に、実際どれくらいかかるかを書きます。当社がお客様の作業を見てきた範囲の目安で、実測ではありません。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| 現状測定(初回) | 1〜2時間 |
| 会社概要の書き直し | 3〜5時間 |
| 事業内容・対応条件の記述 | 5〜10時間(現場への聞き取り含む) |
| 事例ページ 1件 | 15〜30分 |
| llms.txt 設置 | 1時間 |
| 月次の測定と記録 | 月1.5時間 |
この20時間の大半は、現場から条件を聞き取って文章にする作業です。ここは外注しても社内の時間がかかります。「丸投げできる」と考えていると、着手後に止まります。
合計しても、初期は20時間前後です。 これを高いと見るか安いと見るかは会社によりますが、「何をやっているか分からないまま毎月支払う」よりは判断しやすい数字だと考えています。
この記事で言えないこと(限界)
- 当社は特定の同業他社を評価していません。 12項目は基準であって、業者の格付けではありません
- 引用した外部調査は当社の実測ではありません
- 当社自身、施策の効果を測定できていません。 この点で当社も12項目の一部を満たしません
- 業界の状況は変わります。測定手法が確立すれば、この記事の前提も変わります
まとめ
- 「AI検索で上位表示を保証」は成立しない。 順位という概念がない
- 数字の出典をたどる。当社の社内設計書にあった「FAQPage実装で引用率2〜3倍」も、出典は業者ブログで撤回した
- 独立実験では構造化データによる引用増は確認されていない(Ahrefs・SE Ranking・SearchVIU)
- 効果が確認されているのは記述の具体化(GEO論文・KDD 2024)
- 契約前に成果指標を文書化し、報告には試行回数・測定日・エンジン・質問文を必須にする
- 発注しないという選択肢もある。 作業の大半は自社でできる
自社で着手する場合の順序はAI検索対策は何から始めるか — 中小企業の最初の90日にあります。
本記事で引用した外部調査:Ahrefs、SE Ranking、SearchVIU、プリンストン大学ほか「GEO: Generative Engine Optimization」(KDD 2024)、SparkToro / Gumshoe.ai、Piftee(2026年5〜6月・n=196)、辻正浩氏(Web担当者Forum・2026年4月13日)。当社の実測:2026年7月18日Perplexity 3クエリ、2026年8月1日 福岡県金属加工業45社。


