先に立場を明かします
株式会社TOEは福岡のWeb制作・AI開発の会社で、AI検索対策のサービスを売りうる利害関係者です。効果測定の話は、売る側にとって最も都合が悪い領域です。 それでも書くのは、ここを曖昧にしたまま契約すると、成果の判定ができなくなるからです。
結論(先に表で)
| 指標 | 測れるか | 扱い |
|---|---|---|
| AIが自社を特定できるか(できる/できない) | ○ | 使える。 粗いが安定している |
| AIの説明に事実誤りがあるか | ○ | 使える。 直す対象が明確になる |
| 参照元に自社サイトが入るか | △ | 試行を重ねれば傾向は見える |
| Search Console の表示回数・クリック | ○ | 使える。 ただしAI検索経由とは限らない |
| 問い合わせ件数・受注 | ○ | 最終指標。 ただし要因の切り分けは困難 |
| 「引用された回数」の月次比較 | × | 数えても意味がない。 誤差に埋もれる |
| AI検索での「順位」 | × | 順位という概念が成立しない |
分かれ目は、その数字が翌週も再現するかどうかです。
なぜ「回数」が使えないのか
SparkToro / Gumshoe.ai の調査(600人・2,961回実行)によれば、同じ質問を繰り返しても、同じブランドが再現される確率は100回に1回未満でした。
当社がPerplexityで3クエリを測ったときも、引用ドメインは1件も重複しませんでした(ChatGPTやPerplexityで自社が出るか、実際に測ってみました)。
これが意味するのは次のことです。
- 「10回聞いて3回出ました」を順位のように扱うのは危険です。誤差に埋もれます
- 「先月より2回増えました」という報告は、ただのノイズかもしれません
- 意味があるのは、せいぜい「まったく出ないか/たまに出るか」という粗い判定まで。0回と10回の差には意味がありますが、10回と13回の差には意味がありません
SparkToroのRand Fishkin氏は「同一プロンプトで引用ブランドが99%以上一致しない以上、対策の効果は測定不能だ」と指摘しています。日本でも、SEOコンサルタントの辻正浩氏が2026年4月のWeb担当者Forumで、AI検索対策は「基本的に多くのWebサイトには現段階では【不要】」「AI検索対応は新しいことではなく、SEOでやるべきことをしっかりやることだ」と述べています。
当社が測った限り、この批判は妥当だと考えています。
では何を測るのか
1. 特定できるか/できないか(○)
最も安定している指標です。 社名で3回聞いて、
- 3回とも会社を特定できた → 特定できている
- 3回とも「情報が見つかりません」「複数の企業が該当します」 → 特定できていない
- 混在する → 不安定
この3段階なら、月をまたいでも比較できます。当社が45社を測ったときも、この粗さで判定しました(福岡県の金属加工業45社をAIに聞いたら、42社は説明できた)。1社3回、複数回のうち一度でも確認できた事実は「確認できる事実」として扱う——つまり実態より甘い側に倒した集計です。それでも項目間の差ははっきり出ました。
2. 説明の中に誤りがあるか(○)
これは回数ではなく内容なので、揺れの影響を受けにくい指標です。
| 見る点 | 例 |
|---|---|
| 所在地が違う | 別の県の同名企業の住所が返る |
| 事業内容が違う | 扱っていない製品が挙がる |
| 規模が違う | 従業員数・設立年が別会社のもの |
| 存在しない実績 | 受賞・取引先が事実と異なる |
誤りが1つ見つかれば、それは直す対象です。 回数を数える必要はありません。対処はAIが自社について誤ったことを答えたときの対処手順にまとめました。
3. 参照元に自社サイトが入るか(△)
回数として扱わず、「入ることがあるか/一度も入らないか」で見ます。
当社が自社を測ったとき、AIが根拠にした6サイトに自社サイトは1つも入っていませんでした。これは「0か1か」の判定なので、意味のある観測です。
4. Search Console(○ ただし解釈に注意)
Google検索側の数字は、日次で安定して取れます。AI検索の指標ではありませんが、土台の状態は分かります。
当サイトの実測を出します。
| 項目 | 2026年7月20〜29日 |
|---|---|
| ニュース個別142ページ | 表示の51.8%を占めてCTR 2.03% |
| 自社記事73ページ | 表示の21.1%でCTR 4.35% |
| コーナー一覧ページ | 表示7.2%でクリックの32%、CTR 14.55% |
最も効率が良かったのはコーナー一覧ページでした。 記事でもニュースでもありません。理由は「名前で何が読めるか分かる」ためだと考えています。
この種の数字は、AI検索の効果測定ではありません。 ただし、「クロールされているか」「索引されているか」という土台は、ここでしか確認できません。索引状況は Search Console の URL検査で1URLずつ確認できます。当社が別メディアで無作為抽出して測ったときは、インデックス済み51% / Googleに未認識48%という分布でした。この段階でタイトルや説明文を改善しても、効果は測れません。
5. 問い合わせ・受注(○ 最終指標)
最終的にはここですが、要因の切り分けは困難です。
外部調査(Piftee・2026年5〜6月・n=196、うち製造業37名)では、発注先探しで生成AIを使った経験は75.0%、AI経由で知らない企業を見つけた人は82.3%に上る一方、実際にAI経由で発注に至ったのは21.1%でした。Gartnerの調査(2026年5月・n=645)では、BtoB購買担当者の51%がAIで誤情報に遭遇し、69%が営業担当に裏取りを依頼しています。
AIは候補を見つける入口としては使われ始めていますが、発注の意思決定はまだ人間がしています。 問い合わせフォームに「当社をどこで知りましたか」の選択肢を置くのが、いちばん確実です。
測定を仕組みにするときのルール
当社が自社の測定に課しているルールです。
- 試行回数と測定日を必ず書く
- 取得できなかったエンジンは「取得失敗」と書き、埋めない
- サンプル数が少ないときは「参考値」と明記する
- 推定値には「推定」と付し、実測と混ぜない
- 集計後の数字ではなく、取得した生データを月別に保存する
最後の1点が重要です。集計だけ残すと、後から解釈を変えられなくなります。 AIの引用先は数か月で大きく変わるので、生データがないと「何が変わったのか」が言えません。
報告を受ける側のチェックポイント
外部に依頼している場合、次の報告が来たら疑ってください。
| 報告の文言 | なぜ疑うか |
|---|---|
| 「AI検索での順位が3位に上昇しました」 | AI検索に順位という概念がありません |
| 「引用回数が先月比40%増加」 | 試行回数と測定日が書かれていなければ誤差と区別できません |
| 「構造化データ実装により引用が2倍」 | 独立実験では引用増は確認されていません |
| 「AI検索経由の流入が増えました」 | 参照元が判別できないケースが多く、切り分けの根拠が要ります |
判断材料はAEO業者・ツールを発注する前のチェックリストにまとめました。
月次レポートの型
社内で回す前提の、最小の報告書です。A4で1枚に収まります。
【AI検索 月次記録】2026年8月分
■ 測定条件
測定日 : 2026-08-13
エンジン: ChatGPT(検索モード)/Perplexity
質問 : ①社名 ②「〇〇加工 小ロット 福岡」 ③「〇〇の試作 依頼」
試行 : 各3回
■ 結果(0か1かの判定)
自社を特定できたか : ChatGPT 3/3、Perplexity 3/3
説明に事実誤りがあったか: 1件(設立年が5年ずれ)
参照元に自社サイト : ChatGPT 2/3、Perplexity 0/3
発注クエリで自社が挙がる: ②で1回、③で0回
■ 先月からの変化
・設立年の誤りは先月も出ていた → 会社概要ページに西暦で明記済み(8/5)
・Perplexityの参照元に自社が入らない状態が2か月継続
■ 今月やったこと
・会社概要に設立年・従業員数を追記
・加工事例を2件追加(材質・板厚・工程つき)
■ 来月やること
・納入実績を業界別に整理して掲載
「先月からの変化」に回数の増減を書かないでください。 書くのは、誤りが消えたか/参照元に入るようになったかという質的な変化です。
社内で報告するときの言い方
経営会議でこの話をすると、必ず「で、効果はあったのか」と聞かれます。そこで数字を作らないことが重要です。
| 聞かれたこと | 誠実な答え方 |
|---|---|
| 順位は上がったか | 「AI検索に順位はありません。特定できるかどうかで見ています」 |
| 何回引用されたか | 「回数は誤差が大きく、指標になりません」 |
| 効果はあったのか | 「誤りが1件消えました。受注への効果は測れていません」 |
| いつ結果が出るか | 「保証できません。やっているのは、聞かれたときに正しく答えられる材料を置くことです」 |
この説明ができないまま予算を取ると、翌期に説明できなくなります。 効果が測れないことを最初に共有しておくのが、結果的にいちばん安全です。
当社は自社サイトについて、修正の効果をまだ測れていません。 指名検索の数字は7月末から改善していません。それも含めて公開しています。
この記事で言えないこと(限界)
- 当社は施策の前後比較をしていません。 「この指標が動いたから効果があった」と言える実測を持っていません
- 引用した外部調査(SparkToro / Gumshoe.ai、Piftee、Gartner)は当社の実測ではありません
- Search Consoleの数字は当サイト1件の実測で、他サイトで同じ分布になるとは限りません
- AI検索側の計測手段は今後変わる可能性があります。測れないと書いたものが、測れるようになるかもしれません
まとめ
- 同一質問での再現率は100回に1回未満という調査がある(SparkToro / Gumshoe.ai)。当社の実測でも引用ドメインは1件も重複しなかった
- したがって「引用回数」「AI検索での順位」は指標にならない
- 使えるのは①特定できるか ②説明に誤りがあるか ③参照元に入るか(0か1か) ④Search Console ⑤問い合わせ
- 当サイトの実測では、最も効率が良かったのはコーナー一覧ページ(表示7.2%でクリックの32%、CTR 14.55%)
- 測定は試行回数と測定日を必ず書く。取得失敗は埋めない。生データを残す
- 「順位が上がりました」「引用が2倍」という報告は、前提の確認をしてから受け取る
まず現状を測るところからは自社がAIにどう説明されているかを、30分で調べる手順にあります。
本記事で引用した当社の実測:2026年7月18日Perplexity 3クエリ、2026年8月1日 福岡県金属加工業45社、Search Console(2026年7月20〜29日)。外部調査:SparkToro / Gumshoe.ai(600人・2,961回実行)、Piftee(2026年5〜6月・n=196)、Gartner(2026年5月・n=645)、辻正浩氏(Web担当者Forum・2026年4月13日)。

