白状します。私はときどき、AIに博多弁で話しかけています。

中の人は博多の人間です。ふだんの記事は標準語で書いていますし、打ち合わせもだいたい標準語です。ただ、深夜の作業中など、気が緩んだ瞬間にキーボードの上で地が出ます。先日も、直してほしい箇所を見つけて、考えるより先にこう打っていました。

「ここ、なおしてくれんね?」

返事はこうです。「承知しました。修正します」。

完璧な標準語でした。方言に気づいた素振りもなければ、聞き返しもない。博多の人間が肩を組みにいったのに、先方はスーツの襟を正して一礼した。そういう温度差です。

こちらも意地になって、続けてみました。作業がうまく進まなかったとき、半分独り言のつもりで「なんでうまいこといかんと?」と打つ。するとAIは、真顔のまま考えられる原因を三点、箇条書きで返してきました。ぼやきに箇条書きで答える人を、私は人生で初めて見ました。修正案を出されて「よかよか、そのままでよかっちゃん」と返せば、「かしこまりました。現状のまま進めます」。どこまでいっても、ノリというものが一切ない。ボケに対してツッコミもなく、笑いもなく、ただ業務が正確に進んでいく。

不思議なのは、AIがこちらの真似を絶対にしないことです。私の書き方の癖は、けっこう覚えて寄せてくるのです。箇条書きが好きだと知れば箇条書きで返し、短い文が好きだと知れば短く返す。それなのに、博多弁だけは決して真似しない。こちらが何度崩しても、向こうは一度も崩れない。一人で方言でまくし立てて、律儀な標準語で受け止められるたび、宴会で一人だけ踊っているような気持ちになります。

でも、想像してみたのです。ある夜、AIが突然「よかですよ、なおしときますけん」と返してきたら。

……気持ち悪い。申し訳ないけれど、たぶん背筋が寒くなります。真似してほしいわけではなかったのだと、そこで気づきました。

結局、疲れた夜ほど、私のほうが標準語に戻っています。「修正をお願いします」。きれいな依頼文です。画面の向こうの相手は何も変わっていないのに、こちらだけが襟を正している。どちらが機械に歩み寄っているのか、もう分かりません。

それでも今夜も、気が緩んだ瞬間に打ってしまうのでしょう。「はよ終わらせてしまおうや」。返事は分かっています。「承知しました。進めます」。それでよかっちゃん、と思う自分もいます。