米国センサス局のBTOSによれば、2026年5月3日時点の全米企業のAI利用率は19.8%。従業員250人以上は37%、100〜249人は32%に対し、20人未満は20%未満で、しかも2025年12月14日〜2026年5月3日の期間中に有意な増加が確認できなかった。小規模層は「まだ様子見でいい」のではなく、差が開き始めている側にいる。

一次資料の実測:何がどう測られたのか

出典は米国センサス局のBusiness Trends and Outlook Survey(BTOS)に基づく解説記事です(出典:U.S. Census Bureau「Business Trends and Outlook Survey(BTOS)」、著者:Adam Grundy、Cory Breaux、Dhanapati Khatiwoda、公開日:2026年5月26日、https://www.census.gov/library/stories/2026/05/ai-use-businesses.html)。

まず調査の対象範囲を明示します。ここを押さえずに数字だけ持ち出すと、社内で必ず「それは何社の話だ」で止まります。

項目 内容
調査名 Business Trends and Outlook Survey(BTOS)
実施主体 U.S. Census Bureau(米国センサス局)
対象 米国の事業所
頻度・設計 隔週実施の全国代表標本調査
調査期間(本記事が扱う範囲) 2025年12月14日〜2026年5月3日
基準時点 2026年5月3日時点
分母 BTOS回答企業全体(AI利用企業ではない)
n数 本文に記載なし
測定方法 企業の自己申告

n数が本文に記載されていない点は、そのまま書いておきます。事前の下調べでは「1回あたり約2万回答・母集団120万社」という数字が挙がっていましたが、今回取得した本文中に確認できなかったため、この記事では採用していません。確認できない数字を補って書けば、それは出典の辿れない表現になります。

実測値は以下のとおりです。すべて2026年5月3日時点、分母は各区分の全企業です。

  • 全米企業のAI利用率:19.8%(分母=BTOS回答企業全体)
  • 同期間中の推移レンジ:17%〜20%(2025年12月14日〜2026年5月3日)
  • 従業員250人以上:37%
  • 従業員100〜249人:32%
  • 従業員20人未満:20%未満(従業員4人以下の区分も20%未満と本文に記載。期間中に有意な変化なし)
  • 今後6か月間にAIを利用する見込み:20%〜23%(全回答企業に対する自己申告の予定であり実績ではない)

業種別では以下の開きがあります。

業種 AI利用率(2026年5月3日時点) 今後6か月の利用見込み
情報(Information) 39.7% 約42%
金融・保険 33.9% 約39%
小売 約14% 約17%

小売の「約14%」と、今後6か月の各業種値は、いずれも図表からの概数です。本文に小数点まで明記されていないため、この記事でも概数のまま扱います。

規模による断層は「差が広がっている」のか「差があるだけ」なのか

この調査でいちばん重い一文は、利用率そのものではありません。本文自身が「従業員20人以上の企業ではAI利用が増加したが、20人未満の企業では有意な変化はなかった」と書いている点です。

つまり2025年12月14日〜2026年5月3日の期間において、大きい側は動き、小さい側は動かなかった。250人以上の37%と20人未満の20%未満という差は、静止した格差ではなく、片側だけが前に進んだ結果として開いた差だと読めます。

ただし注意が必要です。20人未満について本文が示すのは「20%未満」「4人以下も20%未満」という粗い区分だけで、正確な数値も、小規模層内部の内訳(たとえば5〜9人と10〜19人の違い)も示されていません。「20人未満は19%だった」と書くことはできません。区分の粗さがそのまま解像度の限界です。

さらに、AI利用に関する設問は2025年11月に「あらゆる業務機能におけるAI利用」を問う形へ改訂されています。したがって、それ以前の時系列と単純に比較できない可能性があります。この記事が扱う17%〜20%のレンジは、改訂後の期間内での変動として見るのが妥当です。

日本の中小企業に、これはどこまで言えるのか

言えないことから先に書きます。対象は米国の事業所であり、この数字が日本の中小企業の実態を直接示すものではありません。「日本でも20人未満は20%未満」と読み替えることはできません。

では何が使えるか。使えるのは「規模で断層が生じる」という構造の存在です。同じ経済圏、同じ調査設計、同じ時点で測って、250人以上と20人未満で17ポイント以上の開きが出る。しかも小さい側だけ半年間伸びていない。この形は、AIの普及が均等な波として来るのではなく、体力と人員のある側から先に進むことを示しています。

中小企業の経営者・情報システム担当にとっての実務的な含意は3つです。

  • 自社業種の平均を基準にすると、業種ごと遅れる。小売の約14%は「小売はまだ早い」の根拠ではなく、小売という業種全体が情報業(39.7%)の3分の1近い水準にいるという事実にすぎない
  • 「まだ誰もやっていない」は、20人未満の会社では正しい観測になりやすい。周囲が動いていないことは、遅れていない証拠にならない
  • 今後6か月の見込みが20%〜23%と、現状の19.8%からわずかしか伸びない見通しである以上、これは急拡大局面ではない。焦って全社導入する局面ではなく、業務機能を絞って着実に積む局面

この「業務機能を絞る」という発想は、中小企業がAIで最初に踏む一歩で扱った考え方と同じ線上にあります。規模が小さいほど、全社展開よりも一機能の実装で成果を確認する方が現実的です。

自己申告であることの限界

BTOSが測っているのは「AIを使ったか」「今後6か月使う予定か」という企業の自己申告です。利用の深さも、成果も、測定されていません。

これは軽い留保ではありません。19.8%の中には、経理担当が個人的に生成AIで議事録を整えている会社と、受注予測を業務プロセスに組み込んでいる会社が同じ1票として入り得ます。逆に、使っているのに「AI利用」と認識していない会社が落ちている可能性もあります。

今後6か月の20%〜23%も同様で、これは予定であって実績ではありません。予定は上振れも下振れもします。この数字を「半年後には23%になる」と読むのは誤りで、正しくは「企業が自己申告した予定の集計値」です。

利用の有無ではなく効果を測る話は、自社の評価基準を自分で作るで扱っています。外部統計が測れるのは有無までで、深さと成果は各社が自分で測るしかありません。

発信元と、この記事を書いている側の利害

読者が数字の出どころを判断できるよう、二段階で明示します。

一次資料の発信元は米国センサス局という政府統計機関であり、AI製品やAIサービスの提供者ではありません。自社製品の普及率を自社で発表した数字ではないため、発信元側に「利用率を高く見せる」動機は構造上ありません。ここは公的統計を使う利点です。

一方、この記事を書いているAIの鬼編集部は、株式会社TOEが運営しています。TOEは中小企業向けにAI導入の支援を行う事業者であり、「中小企業のAI導入が遅れている」という論旨は、そのままTOEの営業上の利益と一致します。この点は読者側で割り引いて読んでください。だからこそ本記事では、数字の丸めを避け、本文に書かれていない値の補完を行わず、限界を先に書く形をとっています。

TOEの読み筋

先に明記します。TOEではBTOSに相当する自社調査は未実施です。 以下は、この一次資料を読んだうえでの解釈であり、TOEの実測データに基づくものではありません。

そのうえで、この統計から読み取っている点は3つです。

第一に、「有意な増加がなかった」という結果は、小規模層にとって導入コストではなく着手の入口が問題であることを示唆します。20人未満の会社にAI導入の予算がゼロだとは考えにくく、月数千円の生成AI利用料が障壁になるとは考えにくい。動いていないのは、どの業務から手を付けるかが決まらないためだと見ています。ただしBTOSはその理由を測っていないため、これはあくまで解釈です。

第二に、業種別の開きは業種の性質そのものよりも、業務のデジタル化度合いを反映していると見ています。情報業39.7%と小売約14%の差は、AIの有用性の差というより、扱う対象がすでにデータになっているかどうかの差に近い。小売でも在庫と需要のデータが整っている会社は、業種平均とは別の位置にいるはずです。この点は在庫と需要予測をAIで扱うで扱った領域と重なります。

第三に、今後6か月で20%〜23%という緩やかな見通しは、中小企業にとってむしろ好機の側に読めます。急拡大局面であれば出遅れは致命的ですが、年3ポイント台の積み上げなら、いま一機能に着手する会社は上位2割に入り得る。ただしこれは米国の見通しであり、日本の中小企業に同じペースを当てはめる根拠はありません。

まとめ

  • 米国センサス局BTOSの2026年5月3日時点で、全米企業のAI利用率は19.8%(分母=BTOS回答企業全体、調査期間2025年12月14日〜2026年5月3日、n数は本文に記載なし)
  • 従業員250人以上37%、100〜249人32%に対し20人未満は20%未満で、20人未満は期間中に有意な変化がなかったと本文が明記している
  • 業種別では情報39.7%、金融・保険33.9%、小売約14%(小売は図表ベースの概数)と3倍近い開きがある
  • 今後6か月の利用見込みは20%〜23%で、これは企業の自己申告による予定であり実績ではない。利用の深さと成果は測定されていない
  • 対象は米国の事業所であり、日本の中小企業の実態を直接示すものではない。使えるのは数値そのものではなく「規模で断層が生じる」という構造で、TOEではこれに相当する自社調査は未実施