結論を先に

Gallupが米国就業成人22,368人に実施した2025年Q4調査で、業務で毎日AIを使う人は12%(前四半期10%)、週数回以上の「頻繁利用者」は26%(前四半期比3ポイント増)でした。一方、年に数回以上使う利用者全体の割合は、それ以前の急増の後、Q4では横ばいです。使う人の数ではなく、使う人の使用頻度が伸びた四半期でした。

(出典:Gallup(Gallup Panel による自社調査。記事はGallupの職場調査シリーズ)、2026-01-25、https://www.gallup.com/workplace/701195/frequent-workplace-continued-rise.aspx


まず、この記事の利害関係を明かします

この記事を書いている株式会社TOEは、中小企業向けにAI導入の支援を行っている会社です。「AIを配るだけでは使われません、設計から支援します」と提案して対価を得る立場にあり、この記事の内容について明確な利害関係者です。都合のいい数字だけを拾っていないか、疑いながら読んでください。

発信元についても明記します。この記事は、調査会社であるGallup自身による発表であり、同社は職場エンゲージメント調査およびAI関連を含むコンサルティング・調査サービスの提供者です。つまり「職場のAI活用が課題である」という論点そのものが、同社のサービス需要と結びついています。加えて、調査に使われたGallup Panelは同社の自社パネルです。確率的無作為抽出でリクルートし、CPS(米国人口動態調査)基準で人口統計にウェイト補正をかけている点は、ネット上の任意回答パネルより設計は堅いのですが、自社製品(自社パネル)で自社の関心領域を測っている構図であることは、読者が数字の出どころを判断するうえで押さえておく必要があります。

Gallup自身も注記として「質問の文言や調査実施上の実務的困難が、世論調査の結果に誤差やバイアスを持ち込みうる」と書いています。

そして、この調査と同種の測定を、TOEは自社では実施していません。以下の読み筋はすべて「TOE未実施」の前提です。


実際に何をどう測ったのか

測定されているのは、就業者本人の自己申告による利用頻度です。実際の利用ログではありません。

  • 対象は米国の就業成人、n=22,368
  • 実施期間は2025年10月30日から11月14日
  • 誤差は±1.0ポイント(95%信頼水準)
  • デザインエフェクトは2.26
  • Gallup Panel(確率的無作為抽出でリクルート)を使用し、CPS基準で人口統計にウェイト補正

調査の対象範囲

項目 内容
n数 22,368人
対象 米国の就業成人
実施期間 2025年10月30日〜11月14日
抽出方法 Gallup Panel(確率的無作為抽出でリクルート)
ウェイト補正 CPS基準で人口統計に補正
誤差 ±1.0ポイント(95%信頼水準)
デザインエフェクト 2.26
測定方法 自己申告による利用頻度。利用ログの実測ではない
発信元 Gallup。職場調査・コンサルティングの提供者

以下に出てくる利用率の数字は、断りがない限り分母が「全就業者」です。「AI利用者のうち何%」ではありません。ここを取り違えると実態より大きく見積もることになります。分母の切り替わりで数字の意味が変わる問題は、会社がAIのサブスク代を払うと、業務利用は本当に深くなるのかでも扱っています。


「使う人が増える」から「使う人が深く使う」へ

Q4の結果を三つの数字で押さえます。いずれも分母は全就業者22,368人です。

毎日AIを使う人が12%。前四半期の10%から2ポイント上昇しました。週に数回以上使う「頻繁利用者」は26%で、前四半期比3ポイント増。そして、業務でAIを「まったく使わない」人は49%です。就業者のほぼ半数が、業務でAIに一切触れていません。

一方で、年に数回以上使う「利用者全体」の割合は、それ以前の急増の後、Q4では横ばいでした。つまり新しくAIを触り始める人の流入は鈍り、すでに触っている人の頻度が上がった、という構図です。

指標(2025年Q4) 割合 前四半期からの変化
毎日利用 12% 10%から上昇
週に数回以上(頻繁利用) 26% 3ポイント増
年に数回以上(利用者全体) 横ばい(それ以前は急増)
まったく使わない 49%

分母はすべて全就業者(n=22,368、米国、2025年10月30日〜11月14日)です。


誰が使っていて、誰が使っていないのか

偏りの大きさのほうが、全体平均より重要です。すべて2025年Q4、分母は各カテゴリの全就業者です。

職位別に見ると、利用率は経営層69%、管理職55%、一般社員40%。頻繁利用率は経営層44%、管理職30%、一般社員23%です。同じ指標を2023年Q2と比べると、頻繁利用率は経営層17%、管理職15%、一般社員9%でした。全職位で伸びていますが、経営層の伸びが最も大きく、階層差はむしろ開いています。

働き方別の差はさらに明確です。リモート勤務が可能な職種は利用率66%・頻繁40%・毎日19%。リモート不可の職種は利用率32%・頻繁17%・毎日7%。利用率で34ポイント、毎日利用では12ポイント差(およそ2.7倍)です。

業種別では、テクノロジー業界が利用率77%・頻繁57%・毎日31%と突出しています。専門サービス業は利用率62%(5ポイント増)・頻繁36%・毎日16%。製造業は利用率43%で3ポイント増ですが、頻繁利用・毎日利用の内訳は本文に記載がありません。小売業は利用率33%・頻繁19%・毎日10%で業種中最低、Q4での増加もありませんでした。

区分(2025年Q4) 利用率 頻繁利用 毎日利用
テクノロジー 77% 57% 31%
専門サービス 62%(5pt増) 36% 16%
製造業 43%(3pt増) 記載なし 記載なし
小売業 33%(増加なし) 19% 10%
経営層 69% 44%
管理職 55% 30%
一般社員 40% 23%
リモート可能職 66% 40% 19%
リモート不可職 32% 17% 7%

分母は各カテゴリの全就業者です。なお±1.0ポイントという誤差は全体推定値のものであり、これら細分化したセグメントには適用できません。デザインエフェクト2.26が示すとおりウェイト補正の影響は小さくなく、セグメント別の数値は全体値より不確かだと考えるべきです。


「配ること」と「使われること」は別問題

中小企業の経営者・情シスにとって、この調査で最も効く数字は導入認知のほうです。

勤務先がAIツールを正式に導入していると答えた人は38%。導入していないが41%、わからないが21%でした。合わせて6割強が「自社にAIがない」または「あるかどうか把握していない」状態です。

ここで重要な限界があります。この38%/41%/21%は企業側への調査ではなく、従業員本人の認識に基づく回答です。「わからない21%」がまさに示すとおり、実際の導入率とはずれている可能性があります。会社としては契約しているのに、社員がそれを知らない、というケースがこの21%に含まれていてもおかしくありません。

そして、これは中小企業にとって不都合というより、むしろ本題です。ライセンスを買っただけでは、社員の側の認識には現れません。導入判断が「何本買うか」の議論で終わっているなら、この21%と同じ状態を自社で再生産することになります。問うべきは「誰の、どの業務から使わせるか」と「導入したことが社員に伝わっているか」の二点です。何から始めるかの整理は中小企業のAI導入、最初の一歩をどこに置くかにまとめています。

もう一点、リモート不可職の利用率32%・毎日利用7%という数字は、製造や小売など非デスクワークの現場にAIが届いていない実態を示しています。製造業の利用率43%が3ポイント増えたことは前進ですが、頻繁・毎日の内訳が示されていない以上、それが「使い込み」に至っているかは判断できません。


この調査が言えないこと

不都合な点を並べます。

  • 対象は米国の就業成人に限定されています。日本の職場、まして日本の中小企業の数値としてそのまま使うことはできません。
  • 企業規模による内訳が本文に一切ありません。中小企業か大企業かの区別がないため、中小企業固有の実態はこの調査から読み取れません。
  • 発信元Gallup自身が、職場エンゲージメント・AI関連の調査およびコンサルティングを提供する事業者であり、職場AIの論点を扱う商業的動機があります。
  • Gallup自身が「質問の文言や調査実施上の実務的困難が、世論調査の結果に誤差やバイアスを持ち込みうる」と注記しています。
  • 導入状況の38%/41%/21%は従業員の認識ベースであり、企業側の実態調査ではありません。
  • Gallup Panel(自社パネル)を用いた調査です。確率的リクルートとウェイト補正はありますが、パネル特有の偏りは残ります。
  • ±1.0ptの誤差は全体推定値のもので、業種別・職位別の細分化セグメントには適用できません(デザインエフェクト2.26)。
  • 製造業については利用率43%のみで、頻繁利用・毎日利用の内訳が本文に記載されていません。

TOEの読み筋(TOEでは未実施)

繰り返しますが、TOEはこの調査と同種の測定を自社では実施していません。以下は数字から立てた仮説です。

第一に、この調査は米国データであり、日本の中小企業の実態を示す根拠としては使えません。使えるのは論点の提示までです。国内の状況は国内の調査で確認する必要があります。

第二に、「利用者全体は横ばい、頻繁利用は増加」という形は、AI導入の効果測定を「使った人数」で見ることの限界を示していると考えます。人数は頭打ちでも、中身は動いている。導入後の指標を利用者数だけに置くと、進んでいる期間を停滞と誤読するリスクがあります。

第三に、経営層69%対一般社員40%、リモート可能職66%対リモート不可職32%という差は、AIが「情報を扱う席」に偏って届いていることを示唆します。現場に届かせるには、汎用チャットを配るのとは別の設計が要るはずです。ただし、この調査は非デスクワークで何が障壁になっているかを測っていません。ここは仮説にとどまります。

第四に、社内定着は配布とは別の作業だと考えています。少人数チームでの定着の実務は小さなチームでAIを定着させるには何が要るかに整理があります。ただしこの主張自体も、TOEとして自社で検証したデータを持っているわけではありません。


まとめ

  • Gallupが米国就業成人22,368人に2025年10月30日〜11月14日に実施した調査(Gallup Panel、CPS基準でウェイト補正、誤差±1.0pt、デザインエフェクト2.26)。毎日AIを使う就業者は12%(前四半期10%)、週数回以上の頻繁利用は26%(3ポイント増)、まったく使わないは49%。分母はいずれも全就業者
  • 年に数回以上使う利用者全体の割合はQ4では横ばい。新規の流入ではなく、すでに使っている人の頻度が伸びた四半期だった
  • 偏りが大きい。経営層69%・管理職55%・一般社員40%(頻繁利用は44%/30%/23%、2023年Q2は17%/15%/9%)、リモート可能職66%対リモート不可職32%、業種別はテクノロジー77%から小売33%まで。製造業は43%で3ポイント増だが頻繁・毎日の内訳は記載なし
  • 勤務先がAIを正式導入していると答えたのは38%、未導入41%、わからない21%。ただしこれは従業員の認識ベースで、企業側への調査ではない
  • 対象は米国限定、企業規模別の内訳なし、発信元Gallup自身が職場調査・コンサルティングの提供者。±1.0ptの誤差はセグメント別数値には適用できない。TOEはこの調査と同種の測定を自社では実施していない