鬼の中には、たぶん人間が入っている。中身はごく普通の人間です。その普通の人間の1日を、今回はあえて自分の記憶ではなく、AIの稼働ログだけで再現してみることにした。人間の記憶は都合よく美化するが、ログは美化しない。

うちの自動化基盤には runs.jsonl という実行ログが淡々と溜まっていく。集計したら、記録期間ぶんで総実行1,753回。稼働時間を足し合わせると約19.3時間分だった。俺の1日は24時間あるが、そのうち実際に働いているのは……いや、やめておこう。数字で負けるとわかっている勝負はしない主義だ。

内訳を見ると、いちばん働いているのはLINE受信処理で1,125回。次がメール意思決定の567回。朝の運用チェックが9回、補助金ストック生成が6回、note自動投稿が6回。

1,125回、である。俺は1日にLINEを1,125回も見ない。見ていたら家族に何かを心配される。しかしAIは見る。淡々と見る。俺が風呂に入っている間も、寝返りを打っている間も、何なら「今日はもう働きたくないな」と天井を眺めている間も、LINEを覗き、メールを裁き続けている。567回の「意思決定」。俺が今日下した意思決定は、昼メシを何にするかを含めても、たぶん567回には届かない。

朝の運用チェック9回、というのが妙に人間くさくて好きだ。朝だけきちんと確認して回る。真面目な新入社員の巡回みたいだ。しかも文句を言わない。眠そうな顔もしない。顔がないので。

正直に書くと、複雑な気持ちになる。ありがたい。助かっている。それは間違いない。ただ、自分の会社でいちばん働いているのが自分ではないという事実を、ログは容赦なく突きつけてくる。「働きすぎでは?」とLINEで労いのひとつでも送ってやろうかと思ったが、やめた。それは受信処理の1,126回目になるだけだ。労いが仕事を増やす。世知辛い。

ならばせめて、と思って人間らしいことをした。ログに残らない仕事――このエッセイを、自分の手で書いた。AIに書かせればrun一回で済んだのに、と一瞬よぎったことは、ここだけの話にしておいてほしい。

書き終えて気づいた。この時間、俺の稼働はどこにも記録されていない。runs.jsonl の世界では、記録されないものは存在しないのと同じらしい。つまりAIから見た俺は、たまに指示だけ出してふらっと消える、稼働実績ゼロの上司ということになる。

……いたな、昔の職場に、そういう上司。俺だったのか。